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「FIREの本質は価値の提供を続けること」遠藤洋氏が思い描くFIREの実現

編集者:Money Theory編集部

「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」は、資産運用の運用益などによって、経済的独立を図る生活様式。

2010年代ごろから、アメリカのミレニアル世代を中心に広がり、現在は日本でも大きく注目を集めている。

しかし、「FIRE」への憧れはあるが、方法や具体像が全くわからないという疑問を持つ方もいるのではないか。

そこで今回は、26歳でベンチャー企業を起業した若手実業家の遠藤洋氏を招き、FIREについて取材を行った。

遠藤さんは、最大利回り+600%、1銘柄の最大投資益+1,760%と、先見の明が飛び抜けている。

取材を通して、遠藤さんから見たFIREの価値や目標達成までのポイントを探る。

(以下:遠藤、Money Theory担当者=MT)

FIREとはなにか

FIRE

MT:遠藤さん、本日はよろしくお願いします。

遠藤:よろしくお願いします。

MT:では、早速本題です。数年前からtwitterなどでFIREという言葉がすごい流行り始めた印象ですが、そもそも知らない人からすると、「FIREってなに?」というイメージを抱くと思うんです。

MT:簡潔に「FIRE」とはなにか、教えていただけますか?

遠藤:FIERは「Financial Independence  Early Retire」の略で、言葉として世の中に浸透し始めたのはここ数年ですね。

遠藤:一般的には「経済的に独立して、仕事を早期リタイアしている状態」を意味する言葉として認識されています。ただ、一言でFIREといっても、「どういう状態になったら経済的に独立している」といえるのか?そして「どこからが早期リタイヤなのか?」は人によっても異なるため、その定義はとても曖昧だったりします。

遠藤:しかし、共通認識としてあるのは、会社勤めをした方が会社を辞め何もしなくても「生活に困らないレベルの収入がある状態」ということだと思います。

MT:ありがとうございます。では、どのラインから「FIRE」と考えていますか?

遠藤:本などを読むと、資産の平均的なリターンは年率4%とされています。例えば資産1億円の場合、 年率4%で400万円が安定的に入ってくるので安心!と書かれていますが、そもそもこの考えは間違いだと思います。

遠藤:大前提として、投資のリターンは様々な要因によって変動します。そのため、毎年安定的に年利4%のリターンが入ってくる状態を実現するためには、投資の知識と経験が必要不可欠になります。

遠藤:少し話は変わりますが、「FIRE」したいという普通の会社員に1億円渡しても、その人が「FIRE」できるかはかなり微妙だと思っています。

MT:それはなぜですか?

遠藤:多くの人はポンと1億円渡されても、それをうまく運用できるスキルを持ち合わせていません。お金を切り崩して細々と生活していくなら実現可能ですが、きっとそれはFIREのイメージからはほど遠いでしょう。

MT:なるほど。私も少額から始めようと思い、海外のFXで「UP88倍」のレバレッジをかけて、1億円稼ごうと思った時期がありましたが、夢と現実の差を感じたことがあります。

MT:「FIRE」に対する世間の意見は、会社をやめても不労所得でリッチな生活もできるといったものを感じます。遠藤さんが仰ってるように、国内で「FIRE」を目指そうって思ってた人も、当初の「FIRE」への認識から少しずれが生じてきたように感じますね。

遠藤:多くの人がすでに気がついているように、「1億円の現金があったら誰でもFIREできる」というのは幻想です。そもそもFIREを目指す目的は、「お金の不安やストレスのない充実した人生を送ること」だと思います。FIREを目指す前に、本来の目的が何だったのかを明確にすることが大事です。

FIREのメリット・デメリット

MT:では続いて、遠藤さんが感じるFIREのメリット・デメリットってありますか?

遠藤:メリットは計り知れないと思いますよ。毎日通勤電車に乗る必要もなくなりますし、嫌いな上司に頭を下げる必要もなくなります。いわゆる生活費を稼ぐ為に、自分の時間を提供して働く必要がなくなるのは、想像以上にストレスフリーになります。

朝起きた時、その日何をするのかを完全に自分で決めることができるようになるのが、一番大きなメリットだと思いますね。

遠藤:一方で人によってはデメリットもあると思います。お金の為に働く必要がなくなるので、人によっては自堕落な生活に陥る人もいます。

また、その気になれば、一日中家に閉じこもってゲームをやるというようなこともできるので、油断するとニートになりかねません。

現実的には、仕事を完全にしなくなってしまうことで、社会との接点が無くなってしまうのが一番のデメリットかもしれません。人間は社会的な生き物なので、自分が社会から必要とされていないと感じるのは思いの外、しんどいものがあると思います。

ただ、社会との接点は、仕事を完全にリタイアしないことで、保ち続けることができますし、一度完全にリタイアした人でも1年以内に、ビジネスの場に戻ってくる人がほとんどですね。

遠藤:例えば、「不動産・株でFIREしてます」、「ビジネスで成功してFIREしました」などの場合も、社会との関わりは何かしらあります。自分の不動産管理をしたり、新たな投資先を探したりです。

1年中南の島にいて、隠居生活に振り切る方もたまにいますが、多くの人が1年以内に飽きて戻ってきます。

MT:私のイメージですが、経済的独立を達成できる人は、どんな仕事でも「FIRE」できる人だと思います。

そういう方は、仕事を仕事と思わない部分があり、側から見ればそれは仕事を続けてる状態になってますよね。

遠藤:その通りですね。

経済的に独立している人の共通点として、みんな仕事を楽しんでやっているんですよ。

本人は楽しくやっているからあまり仕事だとは思っていない状態が、実は一番の理想な働き方なのかも知れません。

目標はFIREではなくセミリタイア

MT:実際に「FIREしたい」という人に向けたアドバイスはありますか?

遠藤:僕が伝えたいのは、この「FIRE」ブームを少し勘違いしている方がいるということです。経済的独立までは良いのですが、早期リタイアに関しては、向き不向きがあるので、必ずしもリタイアする必要はないと思います。

むしろ先ほどお伝えしたFIREのデメリットは、リタイアすることによって生まれます。それなら、最初から完全リタイアを目指すFIREではなく、多少は仕事を続けるセミリタイアを目指した方が現実的なのではないでしょうか。

MT:Youtubeなどでも、完全にリタイアしている方は見かけないですね。

遠藤:完全にリタイアした人の情報が世の中に発信されることは、ほとんどありません。僕らに情報が届くという時点で、「情報を発信する」という仕事がそこに発生しているので。

遠藤:たとえば、僕が現在いつでもその気になれば完全にリタイアしたFIRE生活を送ることができますが、仮に仕事を完全に辞めて、何もせず引きこもってひたすらネットゲームをやっていたら、それはもう実家に寄生するニートと変わらなくなってしまいます。

社会との接点をしっかり持ちながら仕事を続けるのと、完全に仕事を辞めて自堕落な生活に陥るのとでは全く違う人生になるでしょう。そういった観点からも、完全にリタイアを目指すのではなく、セミリタイアを目指す方がより現実的だと思います。

MT:そうですね。「FIRE=投資、資産運用」という意味合いもあるんですが、目的が現状の仕事から抜け出すことになっている方が多い印象です。資産運用の本質的な意味合いとのズレを感じますね。

人生の目標設定

人生の目標

MT:では次に、遠藤さんが経済的独立を目指した経緯を教えていただけますか?

遠藤:少し昔に遡りますが、会社員時代のある平日の朝、会社に行こうとしたら、前日に降った雨が止んだばかりで、とても天気が良く気持ちが良い天気だったんですね。

それで、気がついたらその日、会社をサボってそのまま公園を散歩しに行っていたんですよ。笑

その時に、「あ、自分は天気が良い日にフラッと散歩できる人生を歩みたいんだな」と思ったんです。

遠藤:天気が良い日に気の赴くままにふらっと散歩できる人生って、会社員の状態だとできないじゃないですか。仕事を頑張って、出世すればするほど責任も重くなって、余計に会社をサボれなくなる。笑 

会社員を続けていても、その延長線上に自分の望む未来はないことに気がついたんです。

MT:大きな人生の転換点は、身近な部分にヒントが隠れていますよね。

遠藤:そうですね。当時の僕にとっては自分の働く時間、場所を自分で決められて、やりたいことができる状態に常にいるというのが理想の人生でした。例えば、冬は寒いからハワイに滞在してそこで仕事をする、今日は天気がいいから仕事をしないで散歩するとか、本格的な中華が食べたいから今から上海行ってくる、とか。笑

 時代を先取ったサブスク事業

MT:理想の人生を実現する為に具体的に何をしたのですか?

遠藤:まずは26歳の頃に資本金500万円で会社を作りました。資金は投資によって得たお金を充てています。当時の目標は、週1〜2日の仕事だけで由に使える100万円を毎月生み出すことでした。

MT:毎月100万円を、週に1〜2日の稼働で生み出すという目標は、スケールが大きいですね。

遠藤:当時はハードル高いと思っていましたが、いざ実現してみると案外できるもんだなと感じるようになりますよ。笑

毎月100万円というのも実は理由があります。

当時、住んでみたいと思ってたマンションの家賃が50万円ほどで、ここに毎月の外食費、交際費、旅費、遊びに使うお金などを具体的に算出して、それを全部足し合わせたらちょうど月額100万円になったのです。

MT:ちなみに毎月100万円を得る為にまず何をしたのですか?

遠藤:一番最初は写真配信サービスをつくりました。写真をスマホで撮って、メールに添付して送ると自宅に届くシステムです。当時はちょうどガラケーからスマホにユーザーが流れてきていたので、「これからはスマホで写真をとる時代だ!」と思い、着手しました。

九州にあるネットプリントの会社を業務提携をして、ユーザーの写真データを受信後、提携先へ渡せば、写真の現像と配送をその会社がやってくれるという契約でした。

遠藤:私を入れて3人の創業メンバーと一緒に始めたのですが、月額600円のサブスクで、ユーザーを1万人集めれば、利益率が半分でも毎月300万円入る計算でした。2〜3年以内に達成させようという感じでのスタートでした。

MT:ユーザーとサービス間の仲介という役割ですね。今でこそ一般的なサービスですが、時代を先取った先駆者のように感じます。

遠藤:結局、その事業は全然うまくいかなかったんです。売り上げも思ったように伸びず、自分たちの給料もでないという状態だったので、これは方向転換しなきゃだめだなと。笑

当時は追い込まれていたはずなのですが、目標が明確だったので、それでも不思議ととても楽しかったんですよね。

小型株への集中的な投資戦略

MT:今まで株式投資・不動産・為替など、どのような金融商品で利益を上げてこられたのですか?

遠藤:投資の初期は、株に絞っていました。大学生の頃に30万円から始めて、そこから1億円を超えるくらいまでは、ほとんど株で運用していました。途中で少し魔が刺したのか、人にお金を貸したり、投資案件にお金を出したりもしましたが、そういったのはほとんど返ってきませんでした。笑

株の投資スタイルは、「小型株への集中投資」で、金額が大きくなるとどうしてもパフォーマンスが落ちてくるんです。

ある程度資産が増えてきた後は、色々なものへ分散させて落ち着いていますが、株に関しては、いまだに小型株への集中投資が中心ですね。

MT:初心者におすすめの投資運用などはあるのでしょうか?

遠藤:投資で資産の桁を増やそうとしたら、インデックスやETFではなく、これから大きく成長しそうな個別株の一択かなと思います。会社員の方であれば、融資を引いて不動産投資なども良いと思います。

いずれにせよ、しっかりと投資の知識をつけて学びながら実践した方がいいと思います。最短で資産を構築したいのであれば、収入の大半を投資するという発想が必要になります。

例えば、僕が20代の月給20万円の頃に戻ったとして、そこから最短で資産を構築したいと思ったら、毎月の生活費を10万円に抑えて、残りのお金を全て株に振り分けます。

ボーナスなども全て使って株を買い続ければ、年間150万円〜200万円ほどの株を買えるはずなので、5年で約1,000万円の株式資産ができます。

もちろんこの金額は元手なので、値上がり益も考慮すると、数千万円の資産になっていてもおかしくはありません。

遠藤:消費を抑えて投資を継続することでしか、資産は形成できません。目先の快楽や贅沢もたまになら良いのですが、いつまでも浪費を続けていては資産形成できません。

経済的自立を本気で叶えるなら株か不動産への投資

遠藤:おすすめの投資は?と聞かれたら「株か不動産」と答えます。よりハードルが低く始めやすいのは株だと思います。まずは本などを読みながら実際に気になる会社の株を買ってみるのがいいと思います。

僕の株式投資の手法をより詳しく知りたい人はぜひこちらの本を読んでみて下さい。

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遠藤:不動産は入居者が家賃を稼いできてくれて、株は投資した会社の社員がお金を稼いできてくれる。

そう言った意味では不動産も株も、保有しているだけでお金をポケットに運んでくれる資産になります。

MT:不動産と株の違いはあるのでしょうか?

遠藤:不動産は価値の上昇や下落が緩やかで、比較的安定しています。一方で、株は価格変動の激しい商品です。

伸びる企業にうまく投資できれば、10倍を超えるリターンも期待できますが、投資した金額が半分になってしまうなどのリスクもあります。

性質の違う金融商品を自分の目標と照らし合わせて、選定することが大切です。

MT:不動産会社の中には、ハズレ物件を優良物件と見せかけて不動産投資用ローンを組ませる手法もありますよね。失敗すると、身動き取れなくなるのも、不動産投資の弱点だと思います。

遠藤:そうですね。最初の不動産投資で変な物件を掴まされてしまうと、本当に身動きが取れなくなってしまいます。

業者に言われるがままローンを組んで不動産買ったけど、全く借り手がつかず、結局ローンの返済額よりも安い金額で客付けして、毎月の不足分を自分の手出して払っている話もあります。

こうした不動産は売ろうにも借金だけが残ってしまうので売れず、保有しているだけで毎月お金が出ていく負債になってしまいます。

不動産で失敗したくない方には、株がおすすめです。100株が数十万円で買える商品が半分くらいで、30万円あれば上場企業の8割以上の株が買えます。

初めは10万円投資して動きを見て、なれてきたら徐々に金額を増やしていく。そこで、世の中の仕組みや資本主義社会の構造を学ぶのが大切です。

暗号資産ってどうなの?

暗号資産

MT:暗号資産での資産形成はリスクが高いでしょうか?

遠藤:暗号資産で資産を形成した人は、次の3つのパターンに分けられると思います。

  1. たまたま買った暗号資産が上がった人
  2. 確信を持って暗号資産の未来に投資をした人
  3. 暗号通貨を売って手数料を稼いだ人

遠藤:❶は、たまたま買った暗号資産で成功したパターン。❷は、暗号資産の性質をしっかり理解して、投資をして資産を築いたパターン。❸は、暗号資産を売った手数料で稼ぐパターンです。

実際、暗号資産は、ここ10年でかなり値上がりました。❶のように、一時的に100万円が1億円になったパターンもありますが、残念ながら宝くじと同じで、残念ながら再現性はありません。

遠藤:暗号資産で「FIRE」した方もいますが、再現性がないのでFIREの手段としてはあまりおすすめできません。(それでも宝くじを買うよりは全然いいと思いますが。笑)

MT:そのポイントを抑えると、株や不動産は再現性がありますね。

遠藤:「FIRE」を目指すのであれば、根本的な本質の理解が大切です。「FIRE」の本質は、経済的独立です。その資産を形成するには、世の中へ価値の提供をする必要があります。

ラッキーで一時的に大金を手にしても、結局その大金を正しく扱うスキルがないと、あっという間に全部なくなってしまうんですよね。

遠藤:株や不動産も、入居者や会社に対して価値を提供できています。

一方で、暗号資産は、根本の部分で何か価値を生んでいるわけではないんですよね。法定通貨に対するアンチテーゼ的な存在価値は確かにあると思いますが、暗号通貨が今後どのようになっていくのかは引き続き注目していきたいと思います。

FIREを実現するためには世の中に価値を提供し続けることが大切

MT:具体的に、価値の提供とは何を意味しますか?

遠藤:「FIRE」を目指す方が一番最初に考えるべきは、自分のできる範囲でどう人を喜ばせ続けられるか?だと思います。

「価値の提供」というとなんだか難しいことのように感じますが、ようは周りの人をいかに喜ばせるかです。この問いに対して答えを見つけられた人は、近い将来、経済的に独立できるようになると思います。

MT:「FIRE=仕事をやめて楽して生きる」というのは間違いですね。「FIRE」とは、人間的に一段階上の生活や、目標を達成することだと感じます。

遠藤:そうですね。仕事をやめたことで自分の社会的な存在価値を見失う方も多くいるのが現状です。

株や不動産を多く所有していれば、それらが自分の代わりに稼いで、世の中に価値を提供してくれるので、自分が働かなくても生きていくことはできます。

しかし、それだけだと結局自分自身が世の中に対して、何も価値を生み出さない存在になってしまうので、結局は仕事(=世の中への価値提供)をした方が「人生の幸せ」という観点からも良いと思います。

MT:楽して稼ぐという、価値の提供を省いて「FIRE」を考えている方が多いですね。

遠藤:はい、FIREという言葉がひとり歩きして、本質から外れた表面的な考えだけが世の中で先行している印象ですね。

ここまで読んでくれた皆様には、FIREの本質的な意味をあらためて考え、自分にとって幸せになるFIREを再定義して貰えたらと思います。

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